
ストーカー規制法が変わった。AirTag・職権警告・第三者通知、今日から何が変わるのか
⏱ 30秒でわかるまとめ
気になるところから読んでみてください。
ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、2000年にできた法律です。きっかけは1999年に起きた「桶川ストーカー殺人事件」。女子大学生が元交際相手のグループに殺害された事件で、当時は「ストーカー」を直接取り締まる法律がなかった。
つまり、「恋愛感情がらみのつきまとい行為を犯罪として取り締まるための法律」です。
規制対象 = 恋愛感情や怨恨の感情から、つきまとい・待ち伏せ・監視・執拗な連絡・位置情報の取得などを繰り返す行為
「ストーカー行為」の定義 = つきまとい等や位置情報無承諾取得等を「反復して」行うこと(1回だけではストーカー行為にならない)
罰則 = ストーカー行為をしたら1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(第18条)
2000年にできてから何回か改正されています。2013年にはメールでの連絡、2017年にはSNSのDMも規制対象に追加されました。そして2025年12月、最新の大きな改正が成立。今日2026年3月10日に全面施行です。
じゃあ、今回は何が変わったのか、という話ですよね。
今回の改正は2025年12月3日に国会で全会一致で成立しました。改正のポイントは大きく3つ。施行日が2段階に分かれているのがちょっとややこしいです。
| 改正ポイント | 何が変わった? | 施行日 |
| ① 紛失防止タグの規制 | AirTag等を無断で取り付け・位置情報取得する行為を規制対象に追加 | 2025年12月30日 |
| ② 職権警告の新設 | 被害者の申出なしでも、警察が職権で加害者に警告できる | 2025年12月30日 |
| ③ 第三者通知制度 | 探偵等が加害者に被害者の情報を渡すのを防ぐ通知制度 | 🔴 2026年3月10日(今日) |
| ④ 禁止命令の有効期間制度 | 禁止命令に1年の有効期間を設定。延長可能(第5条第8〜9項) | 🔴 2026年3月10日(今日) |
| ⑤ 雇用主・学校の努力義務 | 被害者の勤務先・学校も被害防止に協力する努力義務 | 2025年12月30日 |
①と②はもう始まっています。今日から始まるのは③と④。第三者通知と禁止命令の有効期間制度が加わり、これで改正法が全部出そろった形です。
1つずつ見ていきます。
今回の改正で一番ニュースになったのはこれです。AirTagやTileといった「紛失防止タグ」を悪用して、相手の居場所を追跡する行為が新たに規制対象になりました。
ストーカー規制法には、2021年の改正でGPSを使った位置情報の取得が規制対象に追加されていました。じゃあAirTagもダメだったんじゃないの? と思いますよね。
違うんです。AirTagはGPSを搭載していない。
AirTagはBluetooth信号を発信して、近くにあるiPhoneが位置情報をAppleのサーバーに送る仕組みです。つまり「GPSで位置情報を取得する」わけではなく、「周りの人のスマホのネットワークを使って位置を特定する」。
これが法律の想定外だった。法の抜け穴です。
紛失防止タグの悪用に関する警察への相談件数
2022年:113件 → 2023年:196件 → 2024年:370件
2年で3倍以上。2025年も9月時点で前年を上回るペースでした。
改正法では「位置情報無承諾取得等」という新しいカテゴリが作られました。
📌 新たに規制対象になった行為
取付け = 相手の持ち物や車に、承諾なく紛失防止タグを取り付けること
位置情報の取得 = 取り付けた紛失防止タグから、相手の位置情報を取得すること
対象機器 = AirTag、Tile、Galaxy SmartTagなど、Bluetooth等を利用して所在を把握できる機器全般
GPSだけでなく、Bluetooth経由で位置を特定する機器も含めた形になったので、今後新しい技術が出てきても対応できるようになっています。
これを繰り返すと「ストーカー行為」にあたり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。禁止命令に違反してやった場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。
で、ここからがもう1つの大きな変更です。
これまでのストーカー規制法では、警察が加害者に「やめなさい」と警告を出すには被害者本人の申出が必要でした。
でも、考えてみてください。ストーカーされてる人が、相手に対する措置を自分からお願いするって、めちゃくちゃ怖くないですか?
「警告を出したら逆恨みされるかも」「もっとエスカレートするかも」。そう考えて申出をためらう被害者は多い。結果として、警察は被害を把握していても手が出せない状況がありました。
改正前 = 警告には被害者の申出が必要。本人がためらうと警察は動けない
改正後(第4条改正) = 被害者の申出がなくても、警察の職権で警告を出せる
「相手方の申出により、又は職権で」。この「又は職権で」が今回の改正で追加された部分です(第4条第1項)。
同じように、公安委員会による禁止命令等(第5条)も職権で出せるようになりました。
さらに、今回の改正で禁止命令に有効期間が設けられました(第5条第8〜9項)。期間は1年。「1年で終わりなの?」と思うかもしれませんが、期間終了前に延長の申出ができます。加害者側から見れば「いつまで続くかわからない」プレッシャーになるし、被害者側から見れば定期的に状況を見直せる仕組みです。
「"警告してほしい"って警察に言うのが一番怖かった。相手にバレたら何されるかわからないから。警察が勝手にやってくれるなら、相談するハードルは確実に下がると思う」
もう1つ。被害者の勤務先の事業者や、通っている学校の校長も、被害防止に協力する努力義務の対象に加わりました(第7条第4項)。職場や学校が「うちには関係ない」と言えなくなった、ということです。
ここまでが2025年12月30日から始まっている内容。最後の1つは今日からです。
ストーカーが被害者の住所を知る方法は、自分で尾行するだけじゃありません。探偵や興信所に依頼して調べさせるケースがある。
探偵側は「依頼者がストーカーかどうか」を確認する義務はこれまでなかったので、知らずに被害者の居場所を加害者に渡してしまうことがありました。
改正法ではここに手が入りました。
対象 = 被害者に関する情報を持っている(or 持とうとしている)第三者。典型的には探偵・興信所
通知の内容 = 「あなたの依頼者(情報提供先)はストーカー行為をするおそれがある人です」
求める行動 = 情報を提供しないでください
通知を出す人 = 警察本部長等
ポイントは、警告や禁止命令が出ている加害者について、警察が「この人にはストーカーのおそれがある」と探偵側に教えてくれること。探偵は「知らなかった」とは言えなくなります。
なお、第6条第1項には「何人も、ストーカー行為等をするおそれがある者であることを知りながら、その者に対し(中略)情報を提供してはならない」とも書いてあります。つまり探偵に限らず、友人・家族・誰であっても、ストーカーに被害者の住所等を教えたら法律違反です。
これで改正の3本柱が全部出そろいました。罰則を確認しておきます。
改正後のストーカー規制法の罰則はこうなっています。
| 行為 | 罰則 | 条文 |
| ストーカー行為(つきまとい等・位置情報無承諾取得等を反復) | 1年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金 | 第18条 |
| 禁止命令等(第5条第1項第1号)に違反してストーカー行為 | ⚠️ 2年以下の拘禁刑 or 200万円以下の罰金 | 第19条第1項 |
| 禁止命令等に違反し、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等によりストーカー行為 | ⚠️ 2年以下の拘禁刑 or 200万円以下の罰金 | 第19条第2項 |
| 禁止命令等に違反(ストーカー行為に至らない場合 | 6月以下の拘禁刑 or 50万円以下の罰金 | 第20条 |
ここで「拘禁刑」って何? と思った人もいるかもしれません。2025年6月から「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されています。ざっくり言うと、刑務所に入る刑罰のことです。
紛失防止タグの悪用も、繰り返せば「ストーカー行為」になるので、最大で1年以下の拘禁刑。禁止命令が出ているのに無視してやれば2年以下です。今回の改正で第19条第2項が新設され、位置情報無承諾取得等による禁止命令違反にも同じ加重罰則が明記されました。
ストーカー相談件数:19,567件(毎年約2万件で高止まり) ストーカー規制法違反の検挙件数:1,341件(過去最多。前年比24%増) 禁止命令の件数:2,415件(初めて2,000件を突破。うち6割が緊急禁止命令) 紛失防止タグ悪用の相談:370件(2022年の3倍以上)
年間2万件近い相談があって、検挙は過去最多。被害は減っていません。法改正だけで解決する問題ではないですが、少なくとも「法律がカバーできていなかった穴」は今回でかなり塞がれました。
で、一番大事なことを言います。
法律が変わっても、使い方を知らなければ意味がない。「自分に関係あるかも」と思った人は、以下だけ覚えておいてください。
緊急じゃなくても相談できる番号です。ストーカー被害に限らず、「不安だけどどうしていいかわからない」という段階で電話してOK。改正で職権警告が可能になったので、「自分から申し出るのが怖い」という場合も、まず相談すれば警察側が判断してくれます。
iPhoneユーザーなら「探す」アプリで、自分と一緒に移動している不審なAirTagがあれば通知が来ます。Androidの場合はGoogleの「不明なトラッカーの通知」機能をオンにしておくと検出できます。カバンの中・車の中・自転車のフレームなどを定期的にチェックしてください。
ストーカー被害で一番大事なのは記録です。
LINEやDMのスクリーンショット。着信履歴。つきまといの日時と場所のメモ。不審なタグを見つけたら写真を撮る。これらは全部証拠になります。警察に相談するときに「こういうことがありました」と言えるかどうかで、対応のスピードが変わります。
A. 1回の行為だけでは「ストーカー行為」にはなりません。ストーカー行為は「反復して」行った場合に成立します。ただし、1回でも「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」にあたるので、警察に相談すれば警告を出してもらえる可能性があります。タグは写真を撮って保管してください。
A. はい。改正後は被害者の申出がなくても警察が職権で警告を出せるようになりました(第4条第1項)。ただし実際には、被害の事実を警察が把握している必要があります。まず一度相談しておくことで、警察が判断できる状態になります。
A. 相手がストーカー行為をするおそれがある人だと知っていながら、被害者の住所等を教えた場合は違法です(第6条第1項)。「知らなかった」場合は該当しませんが、少しでも怪しいと思ったら教えないほうが安全です。
A. はい。ストーカー規制法は「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情」が動機の行為を対象にしています。客が好意や怨恨から執拗に連絡してくる、店の前で待ち伏せする、位置情報を追跡するなどの行為は、規制の対象になります。
法律が変わっても、知らなければ使えない。自分を守るための武器は、「知っている」ことです。
📌 この記事の情報について
本記事に掲載している法令の情報は、AI + e-Gov法令検索による条文照合でファクトチェック済みです。ただし法令は改正される場合があります。最新の情報はe-Gov法令検索 (https://laws.e-gov.go.jp/)や所轄の公的機関でご確認ください。個別のケースについては弁護士等の専門家にご相談ください。
参考:警視庁「ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部改正について」 (https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/about_mpd/keiyaku_horei_kohyo/horei_jorei/stalker.html)、政府広報オンライン「ストーカー行為は犯罪です!迷わず警察に相談を」 (https://www.gov-online.go.jp/article/202603/entry-11158.html)、警察庁「令和6年におけるストーカー事案への対応状況」(PDF) (https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/R6_STDVRP_CA_kouhoushiryou.pdf)、ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)
2026年3月10日時点の情報です。